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木っ端微塵を拾い集めます
「鼻水垂れてるよ」
「……ん」
「玉砕しちゃったね」
「……ん」
「無理させてごめんね」
元カノは同じ大学の一個上、可愛い人だった。
やっぱり嫌だと渋る彼の背中を押したけど、いざ元カノを前にしたら腹が座ったのか、腰を折り曲げて謝罪し必死に復縁を乞うていた。
結果はノー。
元カノには新しい彼氏が出来ていたのだ。
でも、こうして気持ちを聞けて良かったと、嬉しかったと、最後は二人とも笑顔で終わった。
元カノが見えなくなった途端、決壊したように大号泣した彼。男の人の、しゃくり上げる本気泣きモードを初めて目にし、どれだけ深く想っていたのか痛いほど伝わってきた。
私のしたことは余計な事だったのかもしれない。
「謝る必要はないよ。強引に連れて来てくれなきゃ、僕はまだ過去に囚われたままだった。結果は残念だけど、言えなかった頃よりスッキリしてる」
ありがとう。
目を真っ赤にして、なんなら鼻水もそのままの間抜けな顔して笑った。
「人を身代わりして満足したつもりになっていたけれど、それは君にも君の彼氏にも失礼な話しだよね。僕と元カノとは違うのに」
「根暗で真面目だから変な方向に考えるのよ」
「はは、言えてる。つーかソレ、僕が言った台詞じゃん。信じてくれてたんだ」
「そりゃ信じるしかないでしょ。チャラ男を演じてた割に、最後はいっつも切ない顔してんだもん」
「……バレてたんだ」
「まぁね。友人も貴方のことデリカシーないって言ってたし。本当にね。最悪だよ」
「ごめんね」
「謝るなら傷付けた責任取ってよ」
「……んじゃ、殴っていい。グーパンで」
「やだよ。手が痛いじゃん」
「じゃあ、どうすれば気が晴れる? 何でもするよ」
「なら、付き合ってくれたら許すよ」
「は? ……え、」
「振られて木っ端微塵になってるところ悪いけど、私は貴方が好きってことを知っておいて欲しい」
見事に固まった彼に苦笑い。
思いもよらなかったと、想像もしてなかったと目を丸くしている。
貴方の最低な動機で友人付き合いが始まったけれど、それは本当に気にしていない。私だって彼氏への当て付けで乗ったのだ。でもあの時、手を差し伸べてくれたこと、緊張していたところ巧みな会話や気遣いで楽しませてくれたこと、彼氏に強烈な毒を吐いてくれたこと、それに救われ、惹かれ、癒されたのは間違いない。
「で、でも僕はまだ……」
「うん。返事は急がないし今は求めてないよ。友人を辞めるつもりだったのに言われても困るよね」
「そ、れは……」
「流石に本当に辞めたいなら仕方ないけど」
「まさかっ?! ないよ! それは彼氏とのことで僕が勝手に離れようとしただけで、友人を辞めたいなんて思ったことはないから!」
「そう、良かった。じゃあこれからも宜しくね。どんどんアプローチさせてもらうから覚悟してて」
彼は分かってないだろう。
過去に決別させたのは私の勝手なわがままだと。
やっとスタートラインに立てたのだ。
絶対に振り向かせてみせるからね。
( 完 )
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