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「……っ!!」
大きく息をのみ込み、目を覚ます。
馴染みのあるベッドの上でいつもの空間、安堵の息が漏れる。
「あれ、でも俺いつベッドに……」
かけてあったハイドの愛用の厚手の毛布に、呆れながらも笑みが溢れた。
大きく体を伸ばしながら起き上がり、肺の空気を入れ替える為外へ出る。
外は明るいが、空は相変わらず暗い。
まるで街を覗き込む様な佇まいの月に若干の不気味さを覚えるが、街の喧騒がその気持ちをかき消す。
大きく深呼吸し、目一杯新鮮な空気を取り込んだ。
それと同時に夢の内容を思い出し、溜息混じりに大きく息を吐き出す。
「何がしたくて生きてるんだ、何故俺は生かされたんだ」
ノイズが走る記憶に、嫌悪感を露わにする。
今日もまたここから、いつもの日常が始まると思っていた。
数秒前までは、そうなると思い込んでいた。
「おはよう」
背後からの男の声に驚き、勢い良く振り返る。
赤いヘルメット、感じたくない威圧感。
「コハク……」
「お前がジキルか?」
「俺に何か用かよ」
張り詰めた緊張感、今すぐにでも逃げ出したい息苦しさ。
だがそんな空気も、ジキルの肩に手を置いた人物の登場で一変する。
「私の家族に何か用かな?」
「ハイド……!」
いつからそこに居たのか、にやけ面のハイドがコハクに臆する事なくいつもの調子で飄々としていた。
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