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「またハイドか…」
呆れ様子で肩を落とすコハクの反応に若干の違和感を感じるも、それを追求する暇も無い。
周囲の状況は目まぐるしく変わる。
「どうしたんだ、ジキル」
コハクの背後から覗き込むように顔を出す誰かに、混乱は最高潮まで達する。
見覚えのある無精髭の男、死んだのを自身の目で見たはずのクツナだった。
毎日溢す見慣れた笑顔は、間違いなく彼のもの。
生きていたという安堵感と共に、昨日の光景は何だったのかふつふつと疑問が湧き上がる。
「クツナさん、あの……」
そこまで声に出してから、目の前の圧に口が動かなくなる。
明確な殺意、これ以上言ってしまったら何かが起こる予感。
声にならない呼吸だけが口から吐き出され、気付けば何度も口をパクパクさせていた。
「やめなさい、コハク。この子に手を出したら許さないわよ」
「そうやって強がるのも、いつまで持つかな?」
吐き捨てたコハクがポケットから紙を取り出したかと思えば、淡々と綴られた文字を読み上げる。
「ジキルとハイド、両名はタレス町長の命により拘束する」
「はっ!?」
ジキルの驚きの声が、閑散としていた路地に響き渡る。
だが驚いているのは、告げたコハク以外全員だった。
クツナもまた驚いてはいたが、次の瞬間にはコハクに掴みかかる。
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