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無理矢理引っ張られ行き先も分からないまま足を走らせ、数分走った所でようやく目的地に辿り着いたのか立ち止まる。
虚ろな目で前を向くと、長く伸びるレンガ調の建物が目に入った。
こんなレンガ調の建物は、ステラの中で1ヶ所しかない。
「時計塔……」
同時に10時を告げる鐘が、街中に報せるように鳴り響く。
街を囲む壁まで届くこの音は、間近で聞くとかなりうるさい。
嫌な表情を浮かべつつ、無意識に耳を塞いでいた。
時計塔の前に辿り着いたのは分かったが、今いる場所は時計塔の正面ではなく見慣れない裏側。
こんな場所に扉がある事なんて、ステラで知ってる人はどれだけいるだろうか。
それ程この地は、誰も足を踏み入れない所だった。
時計塔の裏側には鉄製の扉1つしかなく、他に入り口らしき物は無い。
その扉自体もパネルを操作する機械が取り付けられ、そう簡単に外部の者を中に入れないようになっていた。
だがハイドは、何度も触ってきたような慣れた手付きで扉を開く。
開いた先は長く暗い下りの階段が、地下深くまで伸びている。
普段なら好んで入らないが、無言で促すハイドを見て仕方なく足を踏み入れた。
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