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「そもそも、ジキルがここに転がり込んで来た事自体が間違っていたんだわ。身寄りを失くしたとはいえ、親戚の私の所に来るなんて……」
「別に、身寄り無くなっただけじゃねぇよ」
ポツリと呟いた瞬間、脳裏に一瞬浮かぶ光景。
まるでカメラのシャッターを次々と切るかの様に見えたそれは、ステラでは起こるはず無いと言われなかった事故。
「あれさえ起こらなかったら……」
無意識に唇を噛みしめる。
最早癖付いてしまったこの行為を戒めるかの如く、2度目のゲンコツが頭に直撃した。
今度は手加減してくれたのか、響いた音の割に痛みは無い。
以前は身寄りを失った理由や過去を詮索してきたが、頑なに喋らないジキルを見て一切問われる事は無くなった。
その代わりとして出来たのは、将来に役に立つかもわからないとある日課。
「さぁ、授業の後は研究の時間だ」
彼女は街の一部界隈で有名な科学者だった。
ベンジャミンが発見したとされる街の動力、永久資源は未だ全てが解明されておらず、ハイドは更なる生活の快適を求め日夜研究を続けている。
最も研究目的が楽に生きたいという欲望丸出しなのが気になって仕方ないが、訊いた所で似た答えしか返ってこない事は多少頭が悪くても分かるだろう。
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