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そんなハイドの元で世話になってる以上、手伝える物は手伝いたいと志願したが、気付けば科学者の卵として研究の手伝いをやらされる羽目になるとは思ってもいなかった。
快適な衣食住を無償で貰っているジキルに文句を言う隙間などあるはずも無く、日課として毎日リューズを使った実験を行なっている。
実験のお陰か永久資源を使った機械の発明に目覚め、お前は科学者より発明家に向いてると言われたその日のハイドの目は、科学者の目というより金儲けに眩む歓喜の目をしていたのを鮮明に覚えていた。
「ここは希望の街、願えば何でも叶う街なんだろ?金とか楽がしたいとか願えばくれるんじゃないか?」
研究の為外出の準備をしていたジキルが、思わず手を止めて問いかける。
いつか役に立つと毎日講義形式で聞かされた、ステラの成り立ち。
願えば何でも叶う、求めれば必ず与えられる。
街の住人皆声を揃えて、この街の事をそう言っていた。
ハイドは首を横に振り、色んな機械が入った鞄を肩に担ぐ。
「わからない、それを願わない程皆が幸せって事じゃないかしら。私も楽に生活したい目的で研究してるけど、別に今のままでも十分幸せよ」
準備を終えた2人が外へ出た瞬間、街の中央にそびえる街1番の時計塔の鐘が鳴り響く。
時計の針が9時を指す、だが時計塔の真上に君臨する月は消える気配がない。
空を見上げても見えるのは街の明かり、背の高い時計塔とそれ同等の街を囲む壁、そして空を覆い尽くさんとする不気味な月と星々だけだった。
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