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光溢れる街並みは、どこも活気づいていた。
「あら、おはようジキルくん。今パン焼き上がったから持っていきな」
「ジキルくん、いつも機械直してくれてありがとう!!」
「今日も実験か?怪我だけは気をつけろよ」
パン屋のおばちゃんが焼きたてのパンを手渡され、近所の子連れの母に修理のお礼を言われ、街の建築に携わる大工に心配される。
これも毎日馴染みの流れで、ジキルも手厚い感謝や心配に少しづつ慣れてきていた。
ハイドの方もステラで有名な科学者という事もあって、住人から頻繁に声をかけられる。
街の発展と快適を願う人は、ハイドの他にも多く存在しているからだ。
あらかた知り合いに声をかけられ終わると、目的地である場所へと辿り着いていた。
ステラを取り囲む無機質な壁の前、間近にして外へ逃がさんとする圧迫感を感じる。
さも当然に在るが、そもそもこんなものが建てられた意味を誰も知らない。
ジキル自身も何故かと疑問は浮かんでも、その疑問を解消しようとする気も起きなかった。
「さて、今日はこれを使う」
大きな鞄を雑に下ろしたかと思えば、ハイドは中から小さな箱状の機械を取り出しジキルに手渡す。
説明されずとも、手にしたこれは知っていた。
何も言わず箱状の機械を放り投げると、落下しながらみるみる形状が変化していき、地面に到着する頃には箱だった物が人1人乗れそうな程の板状に変貌している。
「君が開発した浮遊ボード。永久資源の力が動力となり、乗っているだけで目的地に辿り着く」
数日前に開発して隠しておいたはずなのに、いつのまにかバレていた。
今まで開発した中でも個人的自信作なのだが、怪しく緑に光る機能は正直いらなかったと少し後悔する。
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