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取り出した機械は、ジキルが全く関与してないオリジナルだった。
何が起こるか分からずドキドキしていると、急に手を取られ引っ張られる。
「舌を噛むなよ」
「はっ?」
言葉の意味を理解する前に機械は勢いよく飛び上がり、それを掴んでいたハイドと無理矢理引っ張られたジキル共々空中へと投げ出された。
限界まで弓で引き絞られた矢が撃ち出されたかの様に、弧を描き空中を走る。
恐怖や絶叫など何も無かったが、頭にはただただ疑問と機械の凄さに呆然としていた。
「何だよこれ」
「永久資源をずっと研究してきたんだ、私だってこの程度の物は作れる」
「この程度って、俺より凄いじゃん」
「私の弟子なんだ、いずれ作れるようになるさ」
余裕の笑顔を見せるハイドに、少しだけ苛立ちを覚える。
そんな心のもやが晴れないまま地面が近付き、軽く段差を降りた程度の感覚で地面に着地した。
自宅近くの路地に到着したのを確認したのと同時に、安堵からか一瞬体の力が抜ける。
「それで、お前は何を見たんだ?」
一声で意識を引き戻される。
何も説明していなかった事を思い出し、大きく息を吐いて頭を落ち着けた。
「人が死んだ……かも」
「随分と朧げだな。だが人間いつかは死ぬ」
「そういう事じゃねぇ!!コハクに殺されてたんだよ!!」
路地に響く声が、他の無関係な人に聞かれたらと少し冷や汗が垂れる。
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