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「お母さんの髪は長い?」 「うん! いつも結んでるの!」 「そう」  三千円では、洋服はとても買えない。となると小物だが、スカーフやストールも値段は高いし、働き先によっては、使いにくいだろう。となるとハンカチあたりだが、ありきたりすぎる。  髪が長いとなれば、ヘアアクセサリーがいいだろう。レースでできた小花をあしらったバレッタだとか、一本でイイ感じに決まるバナナクリップは、上品なデザインで大人っぽい。  ネックレスやブレスレットなども扱っているが、そちらよりも値段が安価で、二人の予算でも間に合う。  私が用意したヘアアクセサリーを吟味して、二人が選んだのは、パールとストーンが薔薇をかたどった、ポニーフックだった。結んだヘアゴムに引っかけて使うタイプのアクセサリーである。  使い方を説明すると、二人はこれを気に入った。 「お仕事のときはあんまり派手なのはダメなんだって」  仕事中は外して、目立たない普通の黒ゴム。通勤、帰宅中はキラキラしたアクセサリーを付けて、オシャレを楽しむ。そういう使い分けができる優れものである。 「じゃあ、ラッピングするから待っててね」 「うん!」  手早く小さな袋に入れて、リボンのシールを貼りつける。本当は、これだけではショッパーに入れないけれど、特別だ。二人の母親は、うちの店が好きだから。 「お待たせいたしました」  今か今かと待ち構えていた弟の方に、私はショッパーを手渡す。 「お姉さんの爪、まじょみたい!」  背の低い子供だ。普通に前を向いただけで、手元に視線が行く。はっとして、何も悪いことをしていないのに、手を咄嗟に背後に隠した。  少年は、私の反応を訝しむこともなく、笑った。 「お姉さん、いいまじょだよね!」  ママのことを笑顔にしてくれるんでしょう……。  しっかりとショッパーを掴んで、「バイバイ」と手を振る様子を見送った。その胸の内は、なんだかスッキリしていた。
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