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②
「依子さん、本気でそんな奴とずるずる付き合ってるんですかぁ?」
間延びした声に、思わず苦笑した。出かける間際の出来事を話したら、この毒舌だ。客の彼氏を捕まえて、「そんな奴」呼ばわりなど、到底許されない。
けれど、彼女のキャラクターが「仕方ないか」という雰囲気にするのも確かだ。明るいオレンジ色の髪の毛はふわふわで、アメリカのカントリーガール。それを二つに括って、幼稚園児がつけるキラキラしたヘアポニーを付けている。子供の頃よく食べた、ロリポップキャンディみたいだと、常々思う。
彼女は大柄なのだが、ファッションは少女めいている。鼻に浮いたソバカスは、わざわざ描き加えているものだ。
「あれでいいところもあるんだけどねぇ」
「でも、依子さんの口からあたし、彼氏のグチしか聞いてないっすよ?」
むむ、と口を噤む。彼女ののんびりした棘のある言葉が心地よくて、ついつい話をし過ぎてしまう癖は自覚していたが、私はそこまで浩司への不満ばかり述べていたのか。
「そんなことないわよ。たぶん」
「ふーん」
納得していないですよ。そんな顔で、彼女は作業を進めていく。
「今日はどんな感じにします?」
淡いピンクのベースを利用した大理石ネイルを、彼女は丁寧にオフしていく。ジェルネイルは薬剤で簡単に落ちていく。
「そうね」
大理石ネイルは可愛かったけれど、私にしては地味で、今一つテンションが上がり切らなかった。
爪は唯一、私が自由にできるパーツだ。
服との調和を考えなければならないとはいうものの、接客中にずっと対面してる顔とは違う。代金を受け取り、釣銭やカードを返却する。そして品物を渡す。爪に注目が集まるとすれば、その一瞬だ。
ナチュラルメイクに派手な爪はアンバランスだし、実際先輩にはチクリとやられたこともあるけれど、シンプルな桜色よりもやっぱり。
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