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 バイトのバックレで、帰宅も遅くなる。午後六時には退店できるはずだったのに。人員が足りなくて皺寄せが来るのは社員で、私は特に店長だ。店から下がっても、今度は翌日以降のシフトの組み直し。ああ、しばらくまともな休みは取れないらしい。  すぐに辞める人間は、珍しいことじゃない。アパレル業界という華やかなイメージとのギャップに苦しめられるのは、アルバイトだけじゃない。  何とか途中で浩司にLINEを入れることはできたが、帰宅できる時間になっても、返信はなかった。それどころか、既読にすらなっていない。  急いで電車に乗り、スーパーに立ち寄って、夕飯の食材を購入する。 「ただいま。ごめんね遅くなって。これからご飯作るから……」  靴を脱ぎ捨てて、室内へ。 「……」  テーブルの上には、コンビニ弁当の空容器。アルコール度数がやや高い、チューハイの空き缶も転がっている。  散らかした本人はというと、案の定、ベッドの上にいた。スウェットを着ているが、昨日寝るときと同じだった。 「もう食べたの」 「んぁ? ああ。お前、全然帰ってこないからさ」  LINEで遅くなると連絡したのに。ずっとスマートフォンを握っているくせに、私からの連絡に、気づかなかったの。  どっと疲労が肩にのしかかってきた。テーブルの上に置いたエコバッグから、食材が飛び出す。
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