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④
やることなすこと、倦怠感がつきまとう。逃げ出したい気持ちは強いけれど、今日も笑顔で店頭に立ち、「いらっしゃいませ」と声をかける。
インフルエンザが流行り始めたのは本当のようで、スタッフの欠勤も増えた。私はますます忙しい。
ウィンドウショッピングという名の冷やかし客は、帰ってほしい。
心がぎすぎす、ささくれだっていく。
「ありがとうございました」
店の外までショッパーを持っていて、渡す。頭を下げて、一、二、三。ぱっと顔を上げて、店に戻ろうとする。
「あの……」
声をかけられて、振り返った。営業スマイルも忘れない。だが、目の前にお客様はいなかった。
あれ? と思って視線を下に下げる。すると、子供がいた。小柄な私よりも、ずっと小さな子供が二人。
「どうしたの? 迷子かな?」
特撮ヒーローの絵がついたトレーナーを着た男の子と、小学校低学年の女の子。女の子の服は、ひらひらふわふわで、大人になってもこのテイストが好きならば、うちのお客になってくれそうだ。
二人は同時に首を横に振った。顔を見合わせて、女の子……お姉ちゃんの方が、話しかけてくる。
「お、お母さんの誕生日プレゼント、買いに来ました!」
緊張のあまり、声はひっくり返っている。私は二度、目を瞬かせてから、にっこりと小さなお客様に微笑んでみせた。
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