【prologo】episodio.2「Occhi rosso vivo e capelli argentati(真っ赤な目と白銀の髪)」

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 あれから数日。ブルームが帰ってきた。 話を聞くと、どうやら情報を集めに行ってくれていたらしい。前線で戦うホムンクルス。それはこの国の人間なら誰でも知っているらしいが、その詳細はほとんどの人間が知らないから。  人間はなぜ無関心でいられる?そう聞いたら、アェルドは、他人だからさ。とだけ答えた。  まあ確かにそうか。他人だもんな、と理解は出来るが納得は出来なかった。だってそうだろう。彼らのおかげで平和があるのだから。 なぜそんな状況で、知らないふりをしていられる? 「難しいことを考えているね?」  ブルームが眉間をぐりぐりと押してくる。小さく唸りながらその手をはらって「別に」と答えた。それが嘘だということに気づいているのか、ブルームは笑っていた。 怪我を、しているのに。 ブルームは傷だらけで帰ってきた。アェルド曰くどれも深くはない浅いキズらしい。鍛えてきた成果だろうとかなんとか言っていたが、聞きに行くだけで怪我をするなんてやっぱり危ない世界だ。  せっかく仲間たちが戦っているのに、平和じゃないところもあるなんてなんだか腹立たしい。 「それで?その女性は?」  アェルドの視線の先には、一人の女性が居た。この格好は知っている。シスターだ。目元にそばかすとメガネがある女性は慌てて胸の前で手を組んだ。 「会えて嬉しいですわヴィヴァルディ公爵。私はカテリーナ。見ての通り近くの教会のシスターをしています」  カテリーナはオレに気付くと、ぎこちないながらに微笑んだ。その瞬間、胸が苦しくなる。 「うっ」 「ジョシュア!?」 「助けてブルーム、胸が苦しい……!」 「それは大変だ!今すぐ医者を!」 「落ち着けブルーム」 「だが!」  そう言うブルームの肩を掴んでなにやら耳打ちをしているアェルド。するとブルームの表情は見る見るうちに柔らかくなり、最後は微笑ましくなっていた。 「ははーん、そういう……」 「え?ブルーム?」 「安心したまえジョシュア、それは病気じゃない。……いや、ある意味病かもしれないが」  アェルドが、何を言ってるんだ、と言わんばかりにじとっとブルームを睨み付ける。ブルームはなんだか楽しそうだ。  カテリーナが「あ、あの〜」と気まずそうに片手をあげる。ああ、すまない。とブルームが言うと彼女の背に手を添えて説明を始めた。 「カテリーナは行きに出会ったんだ。私よりこの辺りのことに詳しいらしくてね、道案内を頼んでいた。話しているうちにジョシュアに興味が湧いたらしく、思わず連れて来てしまったんだよ。ジョシュアにも、友人が必要と思ってね。それにそこの教会も知っていたから、信用出来ると思ったんだ」  まあ歳は少し離れていそうだが、とブルームがオレを見つめる。確かに歳なんて分かんないしな、とオレも自分の足元を見た。  すると視界に覗き込んできたカテリーナの顔がドアップで映り、思わず「うわっ!?」と尻もちを着いてしまう。 「あーあ、何やってるんだいジェシー」 「はは、大丈夫かい?」 「アェルド、ブルーム……心配してないだろ」 「「まさか」」 腹立たしい気持ちを抑えて手を払ってると、カテリーナの手が差し出される。 「大丈夫ですかジョシュア」 「え?あ、あぁ……ドウモ……」 その手を掴むとカテリーナはすっと立ち上がらせてくれた。そして微笑むと「会えて嬉しいわ、ジョシュア」とオレの手を握る。 「孤児なんですってね……実は私もなの。大変だったでしょう」 孤児?と首を傾げているとブルームがカテリーナの後ろでこくこくと頷いていた。なに?そういう事になってるのか? 「もう大丈夫よ。私と、教会に帰りましょう」 「え?教会?」 「少し待ってくれミス・カテリーナ。ジェシーは私が引き取ったんだ」 「ええ、ですが教会にいる方がジョシュアにとっても幸せだと思いますわ」 「それは……」  アェルドは口を噤んでしまった。え?と思わず見つめてしまう。オレ教会に行くのか?その二人の間にブルームの手が入る。 「待ってくれカテリーナ。急すぎる」 「オルランディ様、早い方がよろしいですわ。彼のためにもここは教会に任せていただいて……」 「「「ジョシュアー!!」」」  その声が聞こえたかと思いきや、三つ子に手を引っ張られていく。それもすごい勢いで。 「うわああああ!!?」 「ジョシュアーー!!」 オレの叫び声とブルームの声が廊下に響いた。
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