【prologo】episodio.2「Occhi rosso vivo e capelli argentati(真っ赤な目と白銀の髪)」

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「……ら、──おら、起きろ」 「ん……」  ゆっくりと目を開ける。そこにはあの大柄な男のシスターと、申し訳なさそうなカテリーナが居た。 「……ごめんなさいジョシュア。でもあなたの為なの」 「どういう……」 「貴方は誘拐されたの。ヴィヴァルディ公爵にね」 それはまあ……他人から見るとそうかもしれないが。 「……ちがう、同意の上で……」 「彼は貴方を利用するつもりだったのよ」 それもまあ……なんとなくは。 「知ってるけど……」 「え!?それでもあそこに居たの!?」 「まあ……」 「行く宛のないガキを利用したんだろ」 「リカルド」 リカルドと呼ばれたその男のシスターは、ぶっきらぼうに言葉をタバコの煙と共に吐き捨てる。 「よくある手口だ。美少年を匿う時にな。そんで、好きなように遊ぶんだろ」 「間に合ってよかったわ、ジョシュア……何も知らないということは、何もされていないのね」 いたぶって遊ぶつもりだったのか、あいつは。まあ、予想はしてたけどあの暖かな時間のせいで鈍ってしまっていた。……最初から、分かってはいたけど……。 「……アェルド……」 「んな奴とっとと忘れちまえ。ここはテメェらみたいな孤児を引き取って育てる教会。オレみたいなやつも雇ってくれる優しいところだよ」 「ところでなんでそんな格好……」 「ああ、何かと都合が良くてな」 そう言うとリカルドは裾を軽く持ち上げる。足はどうやら、義足のようだった。よく分からないのは片足の義足の先に、足の代わりに鋭いナイフの様なものが付いていたからだ。 「この服だと、こんな足でも違和感ねぇだろ」 タバコを水の張ったカゴへと投げ捨てると、じゅっという音とともに火は消えた。 「ともかくここで暮らせ。あいつはいい噂ねぇからな」 「噂……?」 「……に惚れた男なんだよ、あいつは」  魔女……聞いたことはある。不思議な力を使える女性で、忌み嫌われているというのも。そんな存在に惚れた?アェルドが? 「魔女に惚れた男っつーのは単なる伝説だったが、それがあのアェルドだという噂があんだよ。よく分からねぇが、一人の女に執着してるらしい」 まさか、言っていた「大切な人」のことか?オレを預けたとかいう……。 「まあそもそもあんな目(オッドアイ)持ってんだ。よくはねぇだろ」 「オレにとっては恩人だ。あんまり悪く言うと怒るぞ」 静かに睨むと、カテリーナがその間に入るようにオレに話しかけてきた。 「ごめんなさい。リカルドは悪い人じゃないのよ?ただ……」 「おい、余計なこと言うんじゃねぇぞ」 リカルドはそう言うとそそくさと歩いていってしまった。まあ、悪い人では無いのだろうが、怖がられるんだろうな。  カテリーナはそっと隣に腰かけると、申し訳なさそうに見詰めてくる。 「本当にごめんなさい。こんな手荒な真似はしたくなかったのだけれど……リカルドは貴方を守りたかっただけなの。だから……」 「分かってるよ。でもオレは、アェルドに拾われたんだ」 「ジョシュア……」 あいつを信用したわけじゃない。でも、戻らなきゃ行けない気がする。 「だから……」 「行けませんわジョシュア」 「シスター・アレンザ!」 いかにも厳格そうなシスターが歩いてくる。アレンザと呼ばれたその女性はジョシュアの前にしゃがむと、その手を握る。 「貴方はここに居るべきなのです。それが貴方のためなのですよ」 「オレのため……」 「ええ、そうです。ここなら貴方を守れますわ。だから、一緒に居ましょう?あんな人間のことはもう忘れて……」 「オレのためだと言うなら、あそこへ帰してくれ」 オレは、オレの意思で決める。 「後悔しても、それがオレの選んだ道だ」 「ジョシュア……」 「……いけませんわ、いけません……」 アレンザはぶつぶつと何かを呟きながら、オレの顔を掴んだ。咄嗟にカテリーナがその手を掴む。 「シスター・アレンザ!?乱暴は……」 「いけませんわ!あなたのその真っ赤な目に白銀の髪……これが必要なのよ」 するっとその髪を撫でるアレンザを、カテリーナは不思議そうに見つめる。 「シスター……?」 「……捕らえなさい」 「なっ……!」 「ジョシュアを地下牢に入れなさい!!」 そしてさっさとアレンザは歩いていく。その代わりに、男達が部屋へと入ってくる。 カテリーナは離れていくアレンザの背に叫んだ。 「待ってシスター・アレンザ!なぜ捕えるの!?」 「迎えが来るわ。それまで見張ってなさい」 そう言って、アレンザは扉を閉めてしまった。カテリーナは抵抗虚しく連れていかれたジョシュアの方を見て、不安そうに声を漏らした。 「どういう、事なの……」
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