86人が本棚に入れています
本棚に追加
爆音。銃声。悲鳴。断末魔。
焦げた匂い。火薬の匂い。鉄の匂い。……血の匂い。
「I!」
「ああわかってるさⅡ!」
二人で敵を追いつめると同時に手で喉を引っ掻いた。鋭い爪で割かれた喉からは血飛沫が上がり、やがて人間は呆気なく倒れた。足元には、先程まで動いていたただの物体。
返り血を袖で拭って、二人で手を叩く。ぱちん、とこの場に合わない音が響いた。
「やったな。これで二人で百人殺した事になる」
「ああ、君のおかげだドゥエ。ありがとう」
「こっちこそ」
二人でにっと笑い合う。幸せだ。大好きなドゥエと一緒に笑い合える時間。
だからだろうか?オレはそんな幸せに慢心して、油断していたのだ。
ドン、という音と共に、目の前のドゥエが何かに撃たれて倒れた。目を見開いたその瞬間、そのドゥエの体が何かに引っ張られていった。よく見ると、体に何かが巻き付いているようだった。
「──ドゥエ!!!」
咄嗟に手を伸ばしたその腕が一瞬で無くなった。どうやら撃たれて吹っ飛んだらしい。続けざまに足も撃たれてそのまま地面に倒れ込んでしまう。
動けない。なぜ?いつもなら動けるのに、体が痺れて動かない。
ふと、ドゥエに近づく複数の人間に気が付いた。その内の一人が足でドゥエの肩を蹴り、意識が無いことを確認している。
待って。言葉にならない声を上げる。必死で、ドゥエの体を抱える人間達に叫んだ。
待って!!!
それでも言葉にならない。人間たちはもはや振り返ってもくれない。
どんどんと離れていく。
なんで、どうして。待ってよ。待ってくれよ!!!
言葉にならない叫び声だけが、ただ響いた。
最初のコメントを投稿しよう!