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バトルスタート
冬の凍てつく風が、堀を泳ぐ鯉をも震わせている。
その堀に四方を囲われた県立高校。その名もお城高校。
午後三時四十五分。授業終了を告げるチャイムの音が、校内に響き渡った。
その音を合図として、各クラスの掃除当番は一斉に教室の掃除を始める。掃除の時間は十五分。微妙に持て余す時間だ。
「おい、亜美! 今週はお前が掃除当番だ。しっかりやれよ」
東校舎の三階にある二年四組の教室で、一人の男子が声を張り上げた。
彼の名は藤原孝宏。このクラスで学級委員を務める中肉中背の秀才メガネだ。
「ふふ。嫌じゃ!」
江戸時代のお転婆姫様のような口ぶりで、メガネの言葉を完全拒否したのは赤崎亜美。このクラスでいきものがかりを務める小柄なおかっぱ女神だ。
「嫌じゃじゃないよ!」
「ん? じゃじゃ? じゃじゃじゃじゃーーん」
亜美はそう言いながら両手を広げて、教室から脱走しようとした。忍者のような走りで廊下へ出ることのできる引き戸へと向かう。
「おいこら待て」
孝宏はすぐさま引き戸の前へと回り込み、亜美の前に立ちはだかった。
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