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日が暮れて、星々が存在感を強くする新月の夜。
とある一本の電車が、規則正しい振動を内部に伝えながら走っている。
普段、日没後暫くは通学や通勤で賑やかな路線だが、この電車は随分と静かだった。
最後尾の車両その奥の、座席の端っこでは一人の少年が座っている。
学校帰りなのか鼠色のブレザーの上に厚手の白いコートを着込み、小さめのリュックを膝の上で抱えている。
目を閉じてふらふらと揺れるくせ毛の頭。どうやらうたた寝をしているようだ。
―――暫くして電車が大きく揺れ、その体は横へと傾き、
ゴツンッと重い音がして、割と勢いよく金属製の手すりへと頭がぶつかった。
……その衝撃でか、少年はぱちりと目を開ける。
目を覚ました少年は、ぼんやりと赤い目を瞬かせた。
「ん……ふぁぁ……痛い」
腕を伸ばしてゆっくりと伸びをして欠伸を漏らし……そこで頭に走る鈍痛に気付く。
頭をさすり、たんこぶは出来ていないことを確認する。少年はそのままもう一度目を閉じて背もたれに寄りかかった。
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