#05. RADIO WORLD

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「ここは東京なのだから。こんな大きな装置がなくても、バッチリクリアーに受信できるよ」 「そうでしょうけど。長年愛用してきたヤツなので。離れたくなかったんですよね」  真樹先輩はラジオ局のアナウンサーになることを目指して城南大学に入学した。  ってより、俺達の高校、県立名取橋西高校にある放送研究部の大先輩──  今は東京のFMラジオ局、FMジャンクションで制作の仕事をしている河合(かわい)素能子(そのこ)さんの引き抜きに遭い、実質上入試免除で入学したのだ。  まぁ、俺もそうなのだけど。  でも俺は、真樹先輩が思っているほどアナウンサーと言う職業に魅力を感じ、そして希望しているのだろうか。  高校時代はDJより、バンドのために費やす時間のほうが多かったような気がする。  まぁ、それを挽回するためにピアノを封印して、大学に通おうとは思っているけど。  よし…… だいたい片付いたかな。開けた段ボールを畳んで玄関の近くに山積みにする。 「じゃ、行きましょうか」  大学が始まるまでは1週間ほど。今は春休み中であるが、真樹先輩がキャンパスを案内してくれるらしい。  そして真樹先輩が現在アルバイトをしている、素能子ちゃんが務めるFMジャンクションも。  なんか、真樹先輩の後を追っているような気もするけど。これも素能子ちゃんが敷いてくれた道。  ラジオ局へ入社するための最短距離だから仕方がないのか。  桜がやっとチラホラと咲き始めたくらいの陽気。俺は上着を羽織り、靴を履いて玄関を出る。  真樹先輩が続くのを見てからドアに施錠をして、駅まで歩き始める。  俺が住むことになった街は渋谷から郊外へ向かう路線の、各駅停車で5つ目の駅。  大学はさらに郊外方面に4つほど進む。大きな川を渡った先だ。  対してFMジャンクションは反対方向── 都心方面に進み、直結している地下鉄の終点の駅に隣接している。  要するに、大学へ行くにもFMジャンクションへ行くにも、電車1本で済ませられるわけだ。  ちなみに真樹先輩はウチと大学のちょうど真ん中。ここから2つ目の駅の近くで一人暮らしをしている。
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