1人が本棚に入れています
本棚に追加
「あたし、自分のために頑張りたいから、お兄さんと一緒だね」
「ミユキちゃんも? それなら、少しだけ心強いね」
片頬だけで笑って、店員は薄いガーゼを鍋にふわりとかけた。慎重に鍋を傾けて、新しい鍋の中へ。こちらも年季の入ったミルクパン。一回り小さいそれに、濾したスープを注いでいく。
「本当にそう思ってる?」
「そりゃあ、思ってますよ」
鍋に視線を注いだまま、店員はミユキをあしらった。そんなミユキも鍋の中に興味津々だ。
「このスープ、めっちゃシンプルなのに美味しそう」
「そりゃ、師匠から教えて貰ったものですから。美味しくないわけがないよ」
黄金色のスープが鍋の中でぷくぷくと煮立っている。かぼちゃのコクと玉ねぎのとろみ。
ゆっくりとかき混ぜる度に優しい香りが沸き立つ。
最初のコメントを投稿しよう!