昼、商店街

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「あたし、自分のために頑張りたいから、お兄さんと一緒だね」 「ミユキちゃんも? それなら、少しだけ心強いね」  片頬だけで笑って、店員は薄いガーゼを鍋にふわりとかけた。慎重に鍋を傾けて、新しい鍋の中へ。こちらも年季の入ったミルクパン。一回り小さいそれに、濾したスープを注いでいく。 「本当にそう思ってる?」 「そりゃあ、思ってますよ」  鍋に視線を注いだまま、店員はミユキをあしらった。そんなミユキも鍋の中に興味津々だ。 「このスープ、めっちゃシンプルなのに美味しそう」 「そりゃ、師匠から教えて貰ったものですから。美味しくないわけがないよ」  黄金色のスープが鍋の中でぷくぷくと煮立っている。かぼちゃのコクと玉ねぎのとろみ。  ゆっくりとかき混ぜる度に優しい香りが沸き立つ。
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