昼、商店街

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 ミユキは立ち上がって、くるりと背を向けた。 「どこ行くの?」 「学校。大遅刻だけど」  背中にはスクールバック。綺麗で、汚れ一つない。いつも手入れいているのだろう。店員はほっと安堵する。ミユキの言葉に嘘はなかった。ミユキの気まぐれで、今日はたまたまこの時間に顔を出したのだった。 「美術の授業に間に合うと良いね」  店員のかけた声に、ミユキはふふ、と笑みを零す。 「午後の授業だから、間に合う!」  とびっきりの笑顔で、そのまま駆けだした。  店員はくすりと笑って、それからのれんを取り下げた。 「さあ、お客さんを探しに行こうか」  魔法のように消え去った“しあわせスープ屋さん”は、今日もどこかで店を構えるのだ。
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