昼、商店街

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「その師匠って、女の人?」 「うぇ、なんでそんなこと聞くんですか」  ミユキは店員の手さばきを眺めながら、くすりと笑う。 「だって、コンロも、包丁も、まな板もメルヘンチック。お兄さんの趣味じゃないでしょ」 「……やっぱり変ですかね」  小さくなったかぼちゃと玉ねぎをミルクパンの中に放り込むと、ゆっくりとかき混ぜ始めた。熱せられた鍋の中で具材がじゅうじゅうと煙を上げた。 「変じゃないよ。可愛いと思うなぁ」 「なら、いいんですけど。買い換える余裕もありませんしね」 「儲かってないの?」 「ミユキちゃんからお代をもらったこと、あった?」  店員の問いかけに鼻歌で返し、ミユキは大きく伸びをした。 「いやぁ、背徳的だよね。お昼から美味しいスープが飲めるなんて」 「褒めたって何も出てきませんよ。スープくらいしか」 「あはは、お兄さん面白い」  コロンとひとかけらのバターを鍋に投げ入れる。芳ばしい香りがミユキの鼻腔をくすぐった。
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