昼、商店街

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「ん~、おいしそう!」 「もうちょっと待っててね。すぐ出来るから」  ミユキは足をぱたぱたさせてまだかまだかと目を輝かせる。  じゅわじゅわと玉ねぎの水分が始める音。かぼちゃもゆっくりとバターと絡まってとろとろと溶け出す。  店員は、頃合いを見てペットボトルの水を鍋へ注ぐ。次第にくつくつと泡立つ鍋を眺めながら、ふふと頬を緩める。 「スープは人生ですねぇ」 「ちがうよ。スープはご飯だよ」 「僕の人生そのものなんですってば。まったくミユキさんはわかってないなぁ」  だから国語の成績が悪いんですよ。店員がそう軽口をたたくとミユキは口を尖らせた。 「関係ないもん。別に成績に困ったことないし」 「じゃあ、なんで学校に行かないんですか。成績も問題ない。友人関係に困ってるわけでもない」 「だからぁ、そういう気分だったんだってば。行きたくなくなっちゃった。それだけ!」
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