第一章 始まりの日

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言葉を交わしたのはそれだけだった。 割と本当に、何故彼とここまで来たのか理解出来ない。 「ここ。まっすぐ行けばいいから。」 そう礼拝堂を指し示して、彼はこの場から立ち去った。 それも、やって来た方向へ。 何なんだか。 あたしは首を傾げつつその後ろ姿を目にして、まぁいいやと向き直る。 どうせ、今後また関わる事はないだろうし。 そう思って、あたしは礼拝堂の中へと入る。 ずらりと椅子が並び、空いている席へとあたしは腰掛ける。 けれども、この色のせいかやはり好奇の視線に晒されて少し気に触る。 多様性の尊重はどうしたんだよ。 そう内心毒づきつつ、あたしは小さく舌打ちをした。 そうこうしているうちに、寮分けが始まった。 あたしは、第一寮らしい。 この寮分けは、初学期は無造作だが、次学期からは成績によって変わっていくという話だ。 それは寮だけでなく、授業もそのようで。 けれどまぁ、あたしには何の関係もない。 今更、あたしが何を学ぶという。 そう思って、皆が終わるのを待っていれば。 「ねぇ。名前教えてよ。」
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