第一章 始まりの日

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そう、声が聞こえた。 周りには聞こえていないだろう。 あたしの精神に、語りかけてきている。 そんな魔法が使えるとは、案外骨のある者もいるようだ。 「聞こえてるでしょ?教えてよ。」 でも、あたしには答える義理などない。 無視を決め込んでいれば、往生際悪くあたしに尋ね続ける。 「ねえ。名前教えてって。」 ぎゃんぎゃんこうも騒がれると煩くて敵わない。 この場から立ち去れないから余計に。 黙らせても良いが、こんな奴にあたしの魔力を少しでも消費するのは気に食わない。 けれど、この騒音と比較してどちらがマシかというと考えるまでもない。 仕方なしに、あたしは指先を軽く動かしてこの声の持ち主を黙らせる。 やっと静かになった。 あたしは目を閉じて、会合の解散の合図を待つ。 そうしていると。 「第三講義室。」 先程の声とは違う声があたしの脳に届いて。 その声に、あたしは笑みを浮かべずにはいられなかった。
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