第一章 始まりの日

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第一章 始まりの日

昔々。 この国が出来るくらい前よりも、ずっと昔。 一人の魔法使いと、一人の魔法使いがいました。 片や、皆に好かれる人気者。 片や、皆に疎まれる嫌われ者。 後にその二人は大魔法使いと呼ばれ、世界を揺るがす大戦争の中心となる。 その戦争は長く長く続き、そうして悪に落ちた大魔法使いの死によって終結する。 彼女を止めて世界を救った大魔法使いは、歴史に残る偉大な大魔法使いと後世まで讃えられるのであった。 「ーーーだってさ。」 びりびり、と。 あたしはその絵本を破り捨て、嘲笑うかのような笑い声を上げる。 「悪に落ちた大魔法使いの死によって終結?はっ、ばっからしい。あたし今ここで生きてるんですけど?」 よっ、と。 長い階段の上に鎮座する玉座から、あたしは身軽に立ち上がる。 そうして下に見える、和気藹々と賑わう世界を見下ろしながらあたしはゆるりと口元を緩めた。 「ようやく復讐出来る。笑ってられるのも、今のうちだ。」 そう口にして、あたしは目の前の世界に飛び込んだ。
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