第1小節:はじまりのうた

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翔「美味っ!!」 夕紀「でしょ?笑」 翔と夕紀は豪華和食店の個室の一室で、食卓を囲む。 夕紀「ここは何でも絶品なんだよ!?」 翔「…まぁどうせ、お頭にでも連れてってもらった店なんだろ?」 夕紀「違いますー! ここは、他のアーティスト仲間から教えてもらった場所ですーぅ!」 夕紀はいじけた顔をしながら、お味噌汁を飲む。 夕紀「うん…味噌汁ひとつとっても、絶品だね!笑」 翔「……なぁ。」 翔は食卓にCDを1枚置いて夕紀に渡す。 夕紀「これは?」 翔「……夕紀に作った曲。」 夕紀「私に?」 夕紀は両手でそのCDをとる。 翔「それお頭に渡して。」 夕紀「アイドルグループの曲頼まれてたんじゃないの?」 翔「それは、家に帰ってから作る。 だから、それをもらってほしい。」 夕紀「寝てないんでしょ? 大丈夫なの?」 翔「…いらないなら、他のアーティストに渡して。」 夕紀「やーだよっ。絶対渡さない。」 翔「じゃあ、受け取って。」 夕紀「分かっ」ブーーーッ。ブーーーッ。 夕紀の言葉を遮るように、食卓に載っていた夕紀の携帯が鳴る。 ブーーーッ。ブーーーッ。 翔「………」 ブーーーッ。ブーーーッ。 夕紀「………」 ブーーーッ。ブッ。 夕紀が電話に出なかったため そのまま切れてしまった。 翔「………もう帰る。」 夕紀「ま、まだ一緒にいようよ。」 立ち去ろうとする翔の背中にそう声をかける夕紀。 翔「俺は明日までに曲作りがあるし それに夕紀には今から……」 翔の言葉は途中で途切れてしまった。 それに対して夕紀は夕紀で何も言えずに、潤んだ目から涙が出るのを抑えるのに必死だった。 夕紀「もう…抜け出したい。」 夕紀はそう言って両手を顔で隠す。 翔は何も言わない夕紀に 何も言えずにその場を去った。
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