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「何言ってるの。私は雅人君の事、子供の時から信用してたわ、でなきゃあんな事頼まない」
「あんな事?」
そこからの話しは私の知らない母と雅人君の事だった。
私が小学校4年から5年の間に近所で女の子を狙った誘拐事件が相継いだ。
4年半ば迄は家に使用人がいた、その人が私のお迎えに来てくれていた。けれど父の事業の失敗で辞めてもらう事になり、私はひとりで帰る事になった。
その時、近所の雅人君が私と一緒に帰って家まで送り届けると母に言ってくれたと言う。雅人君は久美ちゃんはいじめられている僕をいつも庇ってくれているのでその位させて下さいと言っていたと。
私が嫌がっているのをわかっていたけれど、母との約束をあの事件が起きるまで守り続けてくれたと…。
私は愕然とした。
あの頃を思いだしていた。私は鬱陶しいと思いながらも振り返った時、微笑む雅人君の片エクボを見てほっとしてたなと…。そしてあの質問をした時の雅人君の返事を思いだしてしまった。
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