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「みーちゃん、いつものね」
毎朝八時開店とともに来る清田。六十代男性。はす向かいの寿司屋、『鮨清』の店主だ。
早朝に魚を仕入れに行ったあと、ここでモーニングを食べるのが日課。
モーニングメニューは、分厚いトーストに卵サラダとコーヒーが付いて六百円。
トーストにはお好みでバターと蜂蜜が付くのだが、清田は両方たっぷり塗り、大きな口で美味しそうに食べる。コーヒーはミルク砂糖無し。
ここは常連でほとんど満席になる。毎日決まった時間に来る人、決まった曜日に来る人。
実千果は、常連の好みや注文するものは全て把握している。
祖父がそうしていたように『いつもの』を大事にしている。
この五年、実千果はがむしゃらに働いてきた。友達は結婚し、子供を作っている間、コーヒー一色の生活を送ってきた。
恋愛も学生時代は普通に経験していたが、付き合っても往々にして長続きしなかった。
男装の麗人と揶揄されるような風貌の実千果。付き合う男性も友人関係から発展し、結局友人に戻るパターン。
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