見習い扱い

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見習い扱い

仕事を選ぶ基準と言うのは、大抵、給料かやりたい仕事かのどちらか、つまり金か夢かのどちらかだろう。で、俺はゲームのライターになりたくて、エロゲーメーカーの門を叩いた。特にゲーム業界に実績がなかったので、見習い扱いなら雇ってやるという条件で入社した。頑張っていれば、いずれ正社員にしてもらえると思って頑張りました。 でも、見習扱いということで、当然給料は安く、他のチームのゲームでデバックがあるときも、同じ会社の仲間だから手伝うのは当たり前と、残業代なしで、徹夜でデバック作業を手伝ったりもしました。 最初の仕事は、見習い扱いだから、ゲーム一本丸ごと素直にシナリオを任せてもらえるということはなく、社長が冒頭を書き、その続きを書くという仕事でした。しかも、ホラー映画の呪怨のザッピングシナリオが面白かったと社長が言うので、社長が冒頭を書いたシナリオをザッピングシナリオにしたエロゲーのシナリオを見習い扱いで一本書いた。しかも、このシナリオ、見習いの俺に最初は任されていたが、途中で、見習いの俺では無理だろうということで、別の社員の手に渡り、俺がその件から離れた後、その別の社員が、突然、東京のアパートから田舎(名古屋に引越し、その人が逃げたときに初めて同郷と知りました)に逃げて、俺にシナリオが戻ってきて、最終的に見習い扱いの俺が完成させました。 他にも、なぜか、CG彩色チームのチーフが社長からシナリオを任され、アフレコの直前で、そのチーフがシナリオを間違ってゴミ箱に入れて消去してしまったと。で、仕方なく、見習い扱いの俺のところにシナリオ作成の仕事が。しかも、シナリオだけでなく、ゲームのテキスト資料が、ほとんどなく、雑誌に紹介した設定だけしか文字資料がないと。その時点で上がっている原画やラフも、どういうシーンなのか一切、資料がなく、仕方なく、原画家さんから送られてきた社内にあるラフや雑誌に紹介されたイベントCGを集めて、俺が整理し直し、すでに雑誌に紹介されている記事を俺なりに読み込んで、新しいシナリオを書きあげ、無事、一本のゲームとして世に出しました。 世には出ませんでしたけど、ある原画家さんと進めていた作品で、社長が、女性のガーターベルトの位置にひどくこだわりがあって、俺の名前で、原画家さんにあれこれ注文を付けたこともあります。 見習い扱いで、しかも、敗残処理のような仕事ばかりなので、耐え切れず、退社し、フリーのライターとして活動を始めました。 フリーのライターになったからと言って、急に良くなったわけではありませんでした。最終的に、脳卒中で倒れるほど体に無理をさせましたが、PSで、完全オリジナルのアドベンチャーゲームのシナリオを書かせていただきましたから、夢がかなわなかったというわけではないです。
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