世界の始まりの日、ver私

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世界の始まりの日、ver私

 画面が真っ黒なスマートフォンが、机から落ちる。  コマ割りの映像みたいにコンマ秒で切られたフィルムに張り付くスマートフォンは、ゆっくり、ゆっくりと落ちていく。  縦回転しながら、コマが変わるたびに画面の色を変えていく。  黒、白、赤、青、黄、緑……。  その色がぼやけるころに、ようやくフローリングの床にスマートフォンの角が当たった。それと同時に時計の針が七と十二に重なって、けたたましい鐘の音が室内に響き渡る。 「あぶっ、へむむ……」  飛び起き、布団を剥がして長座体前屈の姿勢で固まる。  情報の整理。 「テトラポット……夢か、びっくりした」  一通りの整理と寝ぼけ眼と格闘しながらの歯磨きを終え、床に直置きのちゃぶ台でコーヒーをすすりながら、は呟いた。 「あのカモメ、先輩だよねぇ。随分可愛くなっちゃって」  このこのと一人で虚空をつつく。  虚しい。  コーヒーで誤魔化して、ありものの朝食を済ませる。  昨日多めに作っておいたカレーを小皿に、こんがり焼いた食パンの上でぐてぇ、ととろけるバターを包むようにルゥを載せ、仕上げに電子レンジでへろへろにしたスライスチーズをセッティングする。  私特製の、「昨日の敵は今日の友」モーニングだ。  鍋に焦げ付いたカレーを、私は許さない。 ――なんて、やっていたら、いつものニュース番組のオジサマが、八時を告げていた。 「やばばっ!?」  私は急いで、朝の支度をする。 ――今日は、の日だ。
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