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テトラポットが浮かんだ海カフェ・オレ
テトラポットが宙を舞う。
俺の目にはそれがはっきり見えた。
とげとげしくて、空を移す海の水面に突き刺さる黒が差した赤色のテトラポットが宙を舞っている。太陽を背に空を廻る一羽のカモメを中心に、太陽系の輪が出来た。
俺は、その外側から、テトラポットと踊るカモメを眺めていた。
そこに行けたら、どんなにか幸せだろう。
左手で持ったボロボロの鉄兜に視線を落とす。
これを被れば、あるいは――。
ぐわん、と大気がテトラポットを薙ぎ、四本の脚がデタラメに回転し、カモメから離れていく。
そうだ、そのカモメから離れてくれ。
俺もそこへ行きたいんだ。
カモメ銀河が滅んだ。
波は氷り、海に四つ足のテトラポットが刺さる。
俺が立っている波打ち際の砂場の温度が、それと裏腹にどんどん上がっていった。
じりじりと足の裏に何本もの針でつつくような鋭利な痛みが奔り、反射的に縮こまった俺の身体の動きで、鉄兜が砂浜に落ちた。
黒鉄のバリトンが重々しく砂を撫でる。その割に、後ろから吹いた風にあおられて、明後日の方向に飛んでいってしまった。
ぼんやりとそれを目で追っていると、鉄兜は滅茶苦茶な軌道を描き、空中でマーブル模様を作った後、カモメの方へ向かった。
駄目だ、駄目だ、止めてくれ、それだけは――。
そこで、俺の意識は途絶えた。
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