1・冒険者たち

3/4
前へ
/39ページ
次へ
アウトフィールドでは砂嵐に遭遇するのは珍しくはない。コロニーの辺境ならば一晩もすれば翌朝には肌を焼くほどの灼熱の太陽を拝めていた。そのつもりで、私は旧時代の遺構にキャンプを設けたものの、たしかに、コロニーを離れるほどに荒れた過酷な世界で生きるのは困難になる。 「発生には汚染原因を必要とするモンスターには近づけない、荒れた過酷な世界のどこかには旧戦の影響を免れたエリアがあるらしい」 それこそが、パイオニアとされる第一世代の冒険者たちが発見した新天地だとされている。コロニーの中央権力にも匹敵するギルドですら、かつては大規模な調査隊を編成している。冒険者たちが酔いどれて噂するだけならばロマンだが、私の親父は調査隊の一員として未探査エリアに向かい、そのまま、コロニーに戻ることはなかった。 「すくなくとも、ギルドにはあまたる歴戦の冒険者たちから選りすぐってまで調査隊を編成するだけの理由があるのさ。秘密主義はギルドのオハコだが、冒険者のはしくれならばロマンにさえ恵まれていればツイている」 そして、調査隊は失敗したものの、冒険者たちにとってはパイオニアの新天地の実在は通説となった。噂をまるごと頭から信じているわけではないが、口惜しいが、親父を失った私にとっては、それだけで終わらせることは難しいのかもしれない。 「さあな、どうなのだろうな。あるかもしれないし、ないのかもしれない。あったとしても、一生を費やしたところで見つけられはしないのかもしれない。だが、ロマンがなければ冒険者はやがてはいなくなるに違いない。私は進まなければ。だって、冒険者なのだものな」 血のつながりすら怪しい親父の捨て台詞はいつしか、私の命題になった。私よりも倍の寿命はあったのだろう親父ですら、コロニーにはロマンを見つけることができなかったに違いない。私もそうだ。わたしにとってもパイオニアの新天地とはロマンだが、誰かが見つけたところで報せに戻るわけではないらしい。ならば、進まなければ。私にはコロニーで寿命をむかえる理由は乏しくなるばかりだったのだ。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加