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砂嵐の晩はモンスターも活動するのは難しい。モンスターとは人類よりもはるかに、荒れた過酷な世界に適応した新たな生命体だが、知覚の潰れる砂嵐のなかではターゲットを判別できなくなるのは私たち、人類とおなじくだ。それよりも、冒険者たちがアウトフィールドで遭遇するもっともデリケートな厄介事はサバイバーたちである。
遺構には私のほかにも先客の気配がある。
サバイバーはコロニーに登録されていない、アウトフィールドで生きる人々の通称だが、目的のためならば冒険者を襲うことすら恐れない、挨拶がわりに弾丸を浴びせるような無法のならず者がおおむねだ。しかし、トリガーフリーで倒せるモンスターとは異なり、サバイバーは目的のためならば、正体をいつわり、ヒトを騙すだけの方法を知っている。そして、なによりもデリケートなのは、サバイバーたちの集めるガラクタはコロニーへの供給源として利用されているからだ。正当な理由を証明できないままに戦えば、ときにはコロニー間のトラブルにすら発展してしまう難題だった。
つまりは、冒険者にとっては襲われるまでは力ずくにはなれない、アウトフィールドでは戦う以外の選択肢が豊富なほどに面倒が生じてしまう。だが、それは戦いを覚えた者にとっては、どこにいたとしても、そうなのかもしれない。
コロニーを離れるほどにサバイバーとの遭遇は減ってはいるが、数日まえにはスクラッパーズを名乗るゴロツキたちに襲撃されたばかりである。冒険者ならば誰しもがアウトフィールドのサバイバーの相手に苦労するが、スクラッパーズへの対処を間違えば痛い目を見ることになる。負ければ、身ぐるみをはがされるのみならず、燻製のジャーキーにされてしまうからだ。なので、サバイバーにはトリガーフリーにはなれないとしても、正体がスクラッパーズならば例外だ。最初からわかるのならば、私としては苦労はしない。戦えるのならば、撃てば倒せるだけ、アウトフィールドでは五分五分ですら、勝算があるだけ恵まれている。私の旅路は恐らくは人知ではくつがえせない苦難だらけになるのだから、戦いの明暗だけで終わるトラブルならば生易しい。
先客たちの顔ぶれ次第ではあるいは、砂嵐の遠鳴りよりも、荒れた晩になるかもしれない。
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