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2・サバイバー
旧戦まえのショッピングモールなのかもしれない、私が、砂嵐からの避難のために見つけた遺構は一面の天窓が特徴的だ。半分ほどは地中に埋もれ、各地で崩落しているが、電源設備は無事なのか、怪しい非常灯が頼りなさげに点灯している。
砂嵐の遠鳴りにまぎれ、先客の気配は定かではないが、すでにトラブルは発生しているらしい。壁は真新しい弾創だらけ、いたるところには温かい薬莢が落ちている。手口からすると、スクラッパーズがいたとしてもおかしくはない。私は武器をスタンバイに構えながら、正体に迫る。去ることができないのならば、解決しないかぎりは眠りこけることは難しいトラブルだった。
頼りない非常灯の暗がりに神経を配りながら、常に正面への射角は維持したまま、コーナーでは息を整える、慎重なクリアリングは心がけていたものの、それでも、不意打ちの形でサバイバーにはでくわしてしまった。反応に遅れたのは、砂嵐の遠鳴りのためとは言い訳しがたい。私の迂闊な見落としなのか、すでに、声の届く距離では、コールドショットすら難しい間近にまで踏みこんでいたのだ。待ち伏せするにしては挨拶がわりの発砲はないものの、トリガープルには負けるシビアなタイミングである。
「スゴいな!珍しい、ピカピカの、見るからに冒険者なヤツだ!キミまでお祭り騒ぎなのなら、三つ目がそろってビンゴができるかもしれないね。本当にオメデタイやつらめ」
アウトフィールドには本気になって戦えば、損をする相手がざらにいる。それでも、利益にはならないとしても、コンタクトには敵意のないことの証明から必要になるのだが、あいにくながら、私は喋れないミュートである。おおよそ、私たちの第三世代は生まれながらになにかしらが困難だ。とりわけて、私が不便しているのは、いくら戦いを覚えたところで、発声のできない言語の壁だった。コロニーでは喋りたいと必死に願ったことは少ないにせよ、命がけのアウトフィールドでは不本意ながら、誤解が生じてしまう場合も知っている。
だが、旅立つ親父を手放すことしかできなかった私にとっては、誤解程度ならば知れているだけ、くじけようとは思わない。私はあるいは、サバイバーに撃たれるのかもしれない。アウトフィールドの砂嵐の晩の、いずことも知れない粗末な遺構が私の終の地の墓石になるのかもしれない。それでも、もしも、一発目では倒れなかったとしたら、私は反撃するだけの覚悟を整える。
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