春心

11/12
前へ
/73ページ
次へ
「何勘違いしてんの?付き合って、っていうのはそういうのじゃないし」 平静な顔で、ツンとした声でそう言ったら、古澤柊斗が気まずそうに「あ、うん」と頷いた。 その表情にチクリと胸が痛むのを、鞄の紐を握りしめることでなんとか誤魔化す。 「何もくれなくていいから。土曜日が空いてるなら一日付き合ってよ。最近勉強ばっかりだし、映画でも見に行きたいと思ってたんだ」 「あぁ、そういう……」 ぼそりと呟いた古澤柊斗が、うつむいて前髪を触りながら顔を隠した。 手のひらの陰になって見えない古澤柊斗の顔に、今どんな表情が浮かんでいるのかわからない。 一日付き合って欲しいとか、ちょっと我儘だったかな。もしかして、迷惑だって思われて困らせてる……?
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加