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「真音?」
僅かに開いたドアの隙間から、姉が顔を覗かせる。
「やっぱり、外で気配がすると思った。どうしたの?」
前までなら、明るい笑顔でパッとドアを全開にしていた姉が、ドアの隙間からあたしの出方を窺っている。
そんなに警戒しなくても……、苦笑いを浮かべつつ。でもそんなふうに姉を警戒させているのもあたしなんだと、自嘲した。
このまま「何でもない」と、逃げてしまえばラクだけど、今日のあたしはそういうわけにもいかない。
ふたりの均衡を崩したのはあたしのくせに、勝手だけど姉に頼みたいことがひとつあった。
「断ってくれていいし、もしよかったらでかまわないんだけど……」
そこまで言って口籠もってしまったあたしの言葉の続きを、姉がドアの向こうでジッと待ってくれる。
「明日、何か服を貸してくれないかな。その……、お姉ちゃんがよく着てるようなふわっとした可愛い感じのやつ」
ドアの向こうの姉の視線を避けるように、斜め下の床に視線を落とす。それでも、話しながら頬がかかーっと熱くなっていくのは抑えられなかった。
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