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あたしの頼みごとを聞いた姉は、黙ったまま何も言わない。
「嫌いだ」とか散々勝手なことを言ったくせに、今さらこんな頼みごとをしてくるあたしに呆れているのかもしれない。
「ごめん、ムリなら別にいいんだ。ありがと……」
渇いた声で笑って自分の部屋に逃げようとしたら、姉が突然、部屋のドアをバッと全開にした。
「いいよ、好きなの選んで。おいで、真音」
姉が手招きをして、あたしに優しく微笑みかけてくる。それは、あたし達の間に蟠りができる前に姉が見せてくれていた笑顔と変わらなかった。
「真音は細いから、どれでも似合うと思うよ」
あたしを部屋に招き入れた姉が、クローゼットを引き開ける。黒やアースカラーの服が多いあたしと違って、姉の服はピンクや白や明るいパステルカラーのものが多かった。
「どんなのがいい?ワンピース?」
姉が白地に細かな花柄のワンピースを取り出してあたしに差し出してくる。
姉の部屋の鏡に、ワンピースをあてられた自分の姿が映る。だけど、姉が出してくれたそのワンピースはガーリー過ぎて、あたしにはあまり似合わないような気がした。
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