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「いつも着てるシンプル目な服も真音に似合ってるけど、よかったら候補のひとつに入れてみて」
黙り込んでいるあたしの手に、姉が白のスカートとグレーのトップスをやや強引に押し付けてくる。
戸惑い気味にそれらを見つめていると、姉が困ったように眉尻を下げた。
「真音が私に何か頼んでくるのって珍しいし。もしかしたらその……明日誰かとデートだったりするのかなって。でも、無理に着てってことではなくて、もしよかったら、ってことだから。余計なお世話だったらごめん……」
早口に話す姉の声量が、自信なさげにだんだんと先細っていく。しょんぼりとした様子で目を伏せた姉の横顔は、それでも整っていて綺麗だった。
これまで付き合ってきた彼氏と出かけるときに、姉の服を借りようと思ったことは一度もない。
そんなあたしが姉の服を借りたいと思ったのは、明日一緒に出かける相手が古澤柊斗だからだ。古澤柊斗が好きなのは、姉みたいなタイプだから。
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