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もしかしたら最初で最後になるかもしれない古澤柊斗とのデート。だから、彼の好みに合うような格好で隣に並びたいと思った。
そんなことを考えてしまってる時点で、かなり恥ずかしいけど。そんなことを考えてしまうくらい、あたしは古澤柊斗からの誘いに期待しているらしい。
「これ、いちおう借りていっていい?」
腕のなかにある服を軽く持ちあげて訊ねると、姉が顔をあげてパッと嬉しそうに目を輝かせた。
「もちろん。よかったら、着て行ってね」
「ありがとう」
最近はあたしの顔色を窺ってばかりいた姉が、あたしの前で明るい声で笑うのはひさしぶりだった。
その表情は綺麗で、可愛くて。姉の服を借りて外側を取り繕ったところで、きっと彼女には絶対に敵わないんだろう。
あたしは姉に気付かれないように、自嘲気味にふっと息を漏らした。
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