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「まおちゃん、ひさしぶり」
予想通り、あたしを見つけるなり速度をあげて駆け寄ってきた彼が、にこりと笑いかけてくる。
「古澤柊斗」
ひさしぶりにその名前をつぶやいたあたしの胸が、ドクンと大きく高鳴った。
笑いかけてくる笑顔だって、心なしか二週間前よりもキラキラしているような気がする。
あとそれから────、いつのまにか少し、背が伸びているような。見上げる目線が僅かに高くなったかもしれない。
会えて嬉しいなんて感情は絶対に顔には出さないように、極力無表情で古澤柊斗を観察する。
放っておくとドクドクと速くなっていく脈を、あたしはカバンの紐を強く握りしめることで必死に鎮めた。
「まおちゃん、どっか行ってたの?」
密かなあたしの努力なんて知りもしない古澤柊斗が、へらりと笑って首を傾げる。
「予備校」
「そっか。まおちゃん、もう受験生だ」
「そう。両親ともに、別にあたしにはそこまで期待してないからいいんだけどね。どこでもいいから、大学には行きなさいって。知らない間に入塾テストの申し込みをされてて、春休みから通ってる」
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