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「なんで?どこで?」
「どこでって、予備校。サッカー部って春休みも部活やってるんでしょ?いつも夕方に制服着た恭介とすれ違うから、部活終わってから来てるのかな?」
春休み中、受験生は日中に講義がある。だけど、他の学年の講義は部活動に配慮してか、夕方以降に固められているようなのだ。
「俺だって、恭介には毎日会うよ。けど、あいつ、そんなことひとことも言ってなかった」
川原のほうに視線を流した古澤柊斗が、何かぶつぶつ言っている。
怪訝に思いながらその顔を眺めていると、古澤柊斗の視線が、ばっとあたしのほうに戻ってきた。
準備のない状態で真正面から目が合って、一瞬後ろに身を引いてしまう。
「俺も行こっかな、予備校」
「へ?」
「だから、予備校」
古澤柊斗が真顔で、深刻そうにつぶやく。
兄の瑛大くんは医学部に通うくらい優秀だけど、古澤柊斗本人がすごく勉強ができるというイメージはない。失礼だけど。
テスト期間中で部活が休みのときでも、自主トレと称して川原で走ってるくらいなのに。そんな古澤柊斗が予備校!?
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