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古澤柊斗が姉の名前を口にするだけでモヤっとしてしまうあたしは、我ながら心が狭い。
あたしは古澤柊斗の彼女でもなんでもなくて。ただ彼に片想いしてるだけの、友達と言えるかすらも怪しい立場なのに。
「別に、何でもない」
自分勝手に強引に話を切ったから、姉についていろいろつっこんでくるかも。そう思ったのに、意外にも古澤柊斗はあたしにそれ以上何も聞いてこなかった。
そういえば、いつの頃からか古澤柊斗はあたしの前であまり姉の話題を口にしなくなった。
その理由があたしを気遣ってのことなのか、どうなのか。そのへんのところはよくわからない。
「じゃぁ、あたしはそろそろ帰るね」
「え、もう帰るの?」
頃合いを見計らって去ろうとしたら、古澤柊斗が残念そうに眉尻を下げるからドキリとした。
薄々感じていたけれど、数ヶ月前から古澤柊斗は少しだけ変だ。
無神経で鈍感なのは相変わらずなのに、たまに……本当にたまに、あたしを期待させるようなことをする。
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