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「なんか、うまくなってた」
古澤柊斗の唇が離れたあと、キスの余韻を感じながら自分の唇を指でなぞる。
「何が?」
「キス。誰かと練習したの?」
今まであたしには、ちゅっと触れるくらいのキスしかしてこなかったくせに。
じっと疑わし気に見上げると、古澤柊斗が心外だとでも言いたげにむっと唇を尖らせた。
「何言ってんの。まおちゃん以外とするわけないじゃん」
「ふーん」
「まおちゃんが油断してるからだよ。どうせ俺には何もできないだろうって」
古澤柊斗が不貞腐れてぷいっと顔をそらす。その表情が可愛くて、つい笑ってしまう。
不貞腐れた古澤柊斗が長いこと顔をそらしたままでいるので、あたしはテーブルの横を通って移動すると、彼の隣にしゃがんだ。
「そんなに言うなら、見せてみなよ。古澤柊斗の本気」
揶揄うように笑って顔を覗き込むと、前髪の隙間から覗く古澤柊斗の黒の瞳が鋭く光る。
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