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「真音ー、柊くん。瑛大くんとシュークリーム買ってきたんだけど、食べ────」
あたし達に声をかけながら部屋に入ってきたのは姉で。お互いに余裕のなさそうな表情で抱きしめ合うあたしと古澤柊斗を見て大きく目を見開いたあとに、いたずらっぽく唇を歪めて笑う。
「今は無理そうだから、食べられそうになったら降りてきてね」
ふふっと笑いながらバタンとドアを閉めた姉の顔はひどく楽しそうで。瑛大くんや母に言いふらしたりするような人ではないとわかっていても、気まずくて恥ずかしかった。
「どうしよう。詩音さんに見られた……」
顔を真っ赤にした古澤柊斗が、ドアの向こうを見つめながらボソッと呟く。
「好きだった詩音さんには見られたくなかった?」
むっとしながら古澤柊斗から離れようとすると、彼があたしを腰からグイッと引き寄せる。
「そうじゃなくて、普通に恥ずかしい。ここはまおちゃんちで、お家の人もいるってわかってたのに。我慢できずに手を出してごめんなさい」
古澤柊斗が恥ずかしそうにそう言いながら、あたしの肩にぽすっと頭を預けてくる。
なんだそれ、と思いながらも、古澤柊斗の行動が可愛く思えて。彼の頭をそっと片腕に抱きしめた。
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