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きみのもの《柊斗》
部活前の空き時間に、三年の昇降口で待っているとまおちゃんが出てきた。
「まおちゃん」
下駄箱の横から顔を覗かせると、まおちゃんが驚いたように少し目を見開いて、それから笑う。
最近、俺に笑いかけてくるまおちゃんの笑顔が前よりも柔らかい気がする。
笑いかけられて若干ニヤニヤしていると、ローファーに履き替えたまおちゃんが近付いてきた。
「ここで何してんの?部活は?」
「うん、これから。まおちゃん、今日予備校だよね。帰りに駅の改札で待ってるね」
「え、それだけ言いにきたの?メッセージでよくない?」
そう返してくるまおちゃんの言葉が、素っ気ない。
でも最近の俺は、まおちゃんの素っ気ない声は照れ隠しだってわかるようになってきたから。構わずポケットの中から小さなお土産袋を差し出した。
「夜でもいいんだけど、お土産だけ先に渡したくって」
「お土産?」
「そう。昨日、俺たち遠足だったでしょ。水族館行ってきたから、まおちゃんに」
目を見開いてお土産袋をしばらく見つめていたまおちゃんが、控えめに顔を綻ばせて俺の手からそれを受け取る。
「そ、か。ありがとう」
「たいしたものじゃないけど。まおちゃんも、遠足のお土産くれたから」
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