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「柊斗、おせーよ」
部活の集合時間ギリギリにグラウンドに滑り込むと、先に練習を始めていた恭介に背中を膝蹴りされた。
「いって。ちゃんと間に合ってんじゃん」
「お前、最近まおちゃんのことでずっと浮かれてるからムカつく」
「何だよ。それ、ただの恭介の嫉妬じゃん。ていうかお前、今もまおちゃんのこと好きなの?」
恭介は俺に何も言ってこないけど、こいつも半年くらい前まではまおちゃんのことを、たぶん本気で好きだった。
「別に」
いつも澄ました顔で本音の読めない恭介が、どうでも良さそうに視線を逸らす。
「だったらごめん。無神経で……」
声のトーンしてそう言うと、恭介が遠くを見ながら俺の肩をポンと叩いた。
「柊斗さ、気にするなら俺よりもあっちかも」
恭介が指差す方に視線を向けると、さっき昇降口で別れたばかりのまおちゃんが他の男と一緒に校門に向かって歩いていた。
お互いに距離をとって何か言い合っているみたいだけど、まおちゃんの隣を歩く男の顔には見覚えがある。
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