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今だって、置き去りにされそうな子犬みたいな表情をして、あたしをここに留まらせようとしたりして。
もし無自覚であたしを惑わせているなら、割と本気で蹴飛ばしてやりたい。
「だって自主トレ中でしょ?」
「あー、うん。そうだった……」
いつもどおりにへらりと笑った古澤柊斗が、あたしから視線を外して目を伏せる。
うつむいた古澤柊斗の横顔は、憂いを帯びていて。人懐っこい笑顔で笑いかけてくるときのような子どもっぽさが少しもない。
古澤柊斗は、こんな大人びた顔をするようなやつだっただろうか。だとしたら、いつからこんな表情をするようになったんだろう。
無言で魅入っていると、あたしの視線に気付いた古澤柊斗と目が合った。
あたしを見つめるその眼差しに否応なく胸が高鳴ってしまうことを、古澤柊斗には絶対に悟られたくない。
眉間に力を入れて軽く睨んだら、古澤柊斗が困ったようにへらりと笑い返してきた。
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