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「だからその、もしまおちゃんがよければちょっとだけ出てきてもらえたらなー、なんて……」
ごにょごにょと口の中で言葉を濁す古澤柊斗を見つめながら、あたしは二ヶ月前に彼にバレンタインデーのチョコをあげた自分を褒めたいと思った。
本当は、あげるかどうかすごく迷ったのだ。
あたしが古澤柊斗に告白をして振られてから、もう半年は過ぎている。それなのに、バレンタインデーにチョコなんてあげたりしたら、未練がましいんじゃないか。
そう思ったから、手作りはしたものの、放課後まで渡すかどうか迷いに迷って。
部活前の古澤柊斗の顔も見ずに、ラッピングしたチョコとクッキーを強引に押し付けて、走って逃げた。そんなムードも何もない渡し方をしたというのに。
「何かくれるの?」
なかなか本題をはっきり言おうとしない古澤柊斗に、あたしのほうから訊ねてみる。
そうしたら、不自然にあたしから視線を逸らした彼から、期待以上の言葉が返ってきた。
「うん、まぁ。まおちゃんから何かリクエストがあればそれでもいいんだけど……」
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