第十章 光の中で

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 救急病院。つながらない。つながらない。つながらないっ。  まず近所の小児科? そんなこと言っている場合かっ。  ともりを抱えバッグを持ち、部屋を出た。飛び込めっ、救急病院っ。  タクシー、タクシー、タクシーっ。  どうしよう。血もタクシーも止まらない。  どうしよう、どうすればいいんだ。  あ……、そうだっ。  堀橋さーんっ。  気が付けば、耳元で堀橋さんの声が。 「どうしました」 「助けてくださいっ」 「落ち着いて」 「ともりの血が止まらないんですっ」 「どこの」 「頭か顔? 救急車もタクシーもだめで、出血多量で死んじゃう……」 「弟をそちらに向かわせます。準備をしてマンションの下で待っていてください。近所にいるはずなので、すぐに着くと思います。いいですか? マンションの下で待っていて」 「はいっ」  電話は切れた。  ともり、大丈夫よ。ぽーりんたちが助けてくれるよ。 「奥さん、どうしたの?」  え?   たぶん、同じマンションの住人だ。 「子どもさんの怪我?」 「そうなんです」  私のカーディガンの袖は真っ赤。ともりのカーディガンも真っ赤。事件だと思われても仕方のない状況だ。しかも大泣き。 「救急車は?」 「知人の車で……」  あ、来た。  すーっと停まる車。  かちゃっ。 「理保子さんっ」 「堀橋君っ」  たたたっ、と堀橋君は走る。  忘れたっ。チャイルドシートっ。そんな場合かっ。 「乗って」  かちゃっ、どしっ、ばたん。  たたたっ。どしん、ばたん。 「しっかり抱いてて。大学病院に行きます」  直君の?  車は走り出した。 「急に行っても大丈夫なの?」 「兄が話を付けています」 「ありがとう。お仕事中にごめんなさい……。救急車も、タクシーもだめで……」 「どうしたんですか」 「こけたのよ。たぶん、リビングのテーブルで頭を打ったのだと……」  何か、ともり熱い。あなた、熱があるの? 否、泣いているからよね。そうよね。 「あーっ、張ってる」  取り締まりだ。  泣けっ、ともり。警察を突破だ。泣けーっ。  すーっと停車。すーっと開く窓。  血だらけの私とともり。  堀橋は言う。 「怪我をして病院に行くんです」 
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