過去

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 俺は幼い頃からブラック企業で働く父の背中を見てきた。いや、実際に姿を見たことは少ない。何故なら父も会社に泊まりがけで仕事をしていたから。そんな父だったから俺は自分は愛されていないんだ。と、疑心暗鬼になったこともある。  でも、母は専業主婦だったので、車のおもちゃで一緒に遊んでくれたり、寝る前に物語を読み聞かせてくれた。その物語というのは、俺の家に代々伝わる絵巻だった。その内容は、羽田羅苦という名前の俺の先祖が、勤労の神が住んでいる神社からお賽銭箱を盗んだ事で、羽田羅苦の親戚が一気に3人死んだというもので、その死んだ3人は、優しい地主の下で快適に仕事をしている者だった。逆に厳しい地主の下で働いていた者は長生きしたらしい。なので毎夜、母は、将来はブラック企業で働きなさいと口を酸っぱくして言っていた事を覚えている。
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